「衣のstories。」KUON WOMEN-scene.02「春の予感。」
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「衣のstories。」
着物に袖を通すことから生まれる、
小さな高揚、静かな自信、
そして、理由のないワクワク感。
そんな何気ない日常の積み重ねが、
暮らしを、人生を、
ゆっくりと豊かにしていくと、私たちは信じています。

Scene 02|「春の予感。」
久々のキモノ。うまく着れた時は気持ちも一緒に整う気がする。
朝の空気が、ほんの少しだけやわらいでいる。
冬の終わりのようでもあり、春の入り口のようでもある。そんな曖昧な温度。
今日は、久しぶりに会う友人と街へ出る約束。
鏡の前で袖を通したのは、KUON WOMENのコットンキモノ。
柔らかな布の上に咲くウィリアム・モリスの模様は、まるで庭の奥で静かに育つ草花のよう。
その上から羽織るのは、ストロベリーシーフの羽織。
絶妙な透け感が季節を先取るお気に入りの羽織。鳥が実をくわえて飛ぶ柄を見ていると心も軽くなる。今日はいつもより遠回りしてみようかな。

友人を最寄駅まで車で迎えに。着物での運転は2回目だけど少し緊張した。
駅前はいつものように人であふれている。
信号が変わるたび、色とりどりのコートが交差する。
人の流れの中で友人を見つけた瞬間、
思わず笑顔が溢れる。
「久しぶりだね。」
それだけの言葉なのに、空気がぱっと明るくなる。
まるで申しあわせをしたかのように、着物姿の彼女が一言、
「今日はちょっと、春っぽい気分だったから。」
時間を戻すような何気ない会話が妙に嬉しい。

ショーウィンドウをのぞきながら歩く午後。
ガラス越しに並ぶ春の服。
まだ少し早い色合いの軽いジャケットや、柔らかなリネン。
街はまだ冬の顔をしているのに、
お店の中だけはもう春の準備をしている。
ふと、風が通り抜ける。
羽織の裾がやわらかく揺れて、
その瞬間、空気の匂いが変わった気がした。
冬の澄んだ気配の奥に、
ほんの少しだけ春の温もりが混ざる。
「ね、今ちょっと春の匂いしなかった?」
友人が笑う。
「そういうの、わかるようになってきたよね。」

カフェの窓際に座り、
コーヒーの湯気の向こうで街を眺める。
行き交う人たちのスピードは相変わらず速い。
でも、着物を着ると不思議と時間の流れが変わる。
外はいつもの忙しい喧騒の中なのに、二人の時間だけが
ゆっくり進んでるように思える。
「着物ってさ、なんか気持ちが整うよね。何だろこの感覚。」
「たしかにその感じ。」問いかけた言葉に友人が静かにうなずく。
装うことは、誰かに見せるためだけじゃない。
自分の気持ちを少しだけ明るい方向へ連れていくための、小さなきっかけ。

帰り道。
夕方の光が街のビルの隙間から落ちてくる。
明るい春色の羽織が、夕焼けの色に溶け込んで見える。
季節はまだ冬の途中。
けれど、今日の空気のどこかに、確かに春の気配があった。
次に会うころは、きっと桜が咲いている。
尽きない会話をしながら袖を揺らして歩く帰り道。
心の中には、もう小さな春が芽吹いていた。
MENYA FABRIC/KUON WOMEN
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